憧れのCEOは一途女子を愛でる
「冴実が甘味処に行きたいらしくてな。朝陽くん、すまんが付き合ってやってくれないか?」
「わかりました」
辰巳さんに気を取られている間に、祖父が社長に頼み込んで話を付けてしまっている。
社長はやわらかな笑みをたたえ、迷うことなく首を縦に振っていた。これでは私ひとりがゴネているみたいになる。
「……いいんですか?」
「ああ。行こう。場所がわからないから案内してくれる?」
「はい」
とんでもない展開になり、私は気が動転して心臓がどうにかなりそうだ。
落ち着け、落ち着けと自分に言い聞かせながら、先に歩き出した社長の背中を追った。
外はまだ雨が降っていて、傘をさしつつ社長の隣を歩く。
お店は碁会所からさほど離れていないけれど、歩道には水たまりがあちこちにできているので足元が悪い。
「靴、濡れませんでしたか?」
瓦屋根のある和風な建物の花野庵に到着し、テーブル席の椅子に腰を下ろすタイミングで社長にそっと尋ねてみる。
鮮やかな水色のリネンシャツが、雨が当たったところは色が濃く変わっていたので、足元はもっと濡れたのではないかと心配になった。
「大丈夫。君は?」
「私は平気です。たいした靴じゃないですし」
社長はウィングチップと呼ばれるW文字の装飾が施されたダークブラウンのオシャレなブーツを履いている。
私は普段使用しているスニーカーだから、濡れても汚れてもどうってことはない。
それにしても、社長はなんて脚が長いのだろう。いつの間にか脚を組んだその姿に、外国人みたいなスタイルの良さだなぁと感心していた。
「わかりました」
辰巳さんに気を取られている間に、祖父が社長に頼み込んで話を付けてしまっている。
社長はやわらかな笑みをたたえ、迷うことなく首を縦に振っていた。これでは私ひとりがゴネているみたいになる。
「……いいんですか?」
「ああ。行こう。場所がわからないから案内してくれる?」
「はい」
とんでもない展開になり、私は気が動転して心臓がどうにかなりそうだ。
落ち着け、落ち着けと自分に言い聞かせながら、先に歩き出した社長の背中を追った。
外はまだ雨が降っていて、傘をさしつつ社長の隣を歩く。
お店は碁会所からさほど離れていないけれど、歩道には水たまりがあちこちにできているので足元が悪い。
「靴、濡れませんでしたか?」
瓦屋根のある和風な建物の花野庵に到着し、テーブル席の椅子に腰を下ろすタイミングで社長にそっと尋ねてみる。
鮮やかな水色のリネンシャツが、雨が当たったところは色が濃く変わっていたので、足元はもっと濡れたのではないかと心配になった。
「大丈夫。君は?」
「私は平気です。たいした靴じゃないですし」
社長はウィングチップと呼ばれるW文字の装飾が施されたダークブラウンのオシャレなブーツを履いている。
私は普段使用しているスニーカーだから、濡れても汚れてもどうってことはない。
それにしても、社長はなんて脚が長いのだろう。いつの間にか脚を組んだその姿に、外国人みたいなスタイルの良さだなぁと感心していた。