憧れのCEOは一途女子を愛でる
 男性の中には甘い物が苦手という人も割と多いので、もしかしたら無理に付き合わせたのかもしれないと一瞬肝を冷やしたが大丈夫だったみたいだ。

 抹茶あんみつのセットをふたつ注文すると、しばらくして温かいほうじ茶と共に運ばれてきた。
 雨が降っているせいか、だんだんと身体が冷えてきていたので、湯気を立てているほうじ茶を口にするとおいしくて癒される。

「スイーツなんて久しぶりに食べたけど、案外うまい」

「社長のお口に合ってよかったです。特にこのつぶあんが上品な甘さで絶品なんです」

 つぶあんは四国の和三盆という砂糖を使用しているのでやさしい甘さなのだけれど、私にはちょうど良くて気に入っている。
 社長にも満足してもらえたのがうれしくて思わず頬が緩んだ。
スイーツを口に運んでいる社長の姿が普段のクールな印象とは違っていて、自然と胸がキュンとする。
 黒い器に添えられた左手も、スプーンを持つ右手も、指が長くて本当に綺麗だ。

「休日に社長って呼ばれると変な気分だな」

「すみません! ついそう呼んでしまいました。ジニアールで働いていると言っても私のことはご存知ありませんよね」

「知ってるよ。伊地知さんのお気に入りだから」

 まさか社長に認識してもらえているとは思わなくて、私は目を見開いた。すべては伊地知部長のおかげだ。

「以前から君の名前は伊地知さんからよく聞いていたし、直接話はしていないが、俺が商品部に行ったときにはあいさつくらいはしてるだろう?」

「はい。記憶に残していただいているなんて……うれしいです」

 社長がたまに用事で商品部にやってくることがあるのだけれど、大勢いる社員の顔などいちいち覚えていないと思っていた。でもそれは社長に対して失礼だったと瞬時に反省をした。
 社長は本当に社員思いで、私の中で尊敬の念がさらに深まっていく。

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