憧れのCEOは一途女子を愛でる
「それにしても君が倫治さんの孫だったとは」

「私も驚きました。社長と辰巳さん、名字が違うのですね」

「……いや、同じだけど。じいさんの名前は、神谷辰巳」

 社長の説明で急に合点がいった私は小さくウンウンとうなずいた。

「私、辰巳が名字だと思い込んでいました」

 どうやら私は盛大に勘違いをしていたらしい。恥ずかしくて顔が熱くなってくる。

「余談だけど、俺のひいばあさんが辰年に身ごもって巳年に産んだから名前を辰巳にしたって聞いた」

 話を聞きながら納得する私を見て、社長は「どうでもいいよな」とつぶやいてフフッと笑う。

「碁会所にはよくいらっしゃるんですか?」

 私の祖父とは以前にも会ったことがあるようだったので率直に尋ねてみた。すると社長は抹茶あんみつを口に運びながら首を横に振った。

「今日で三度目。車で迎えに来いって連絡が来ても都合が悪かったら行けないから。一緒に住んでない分、努力しないと疎遠になるってわかってるんだけど」

「仲がいいんですね」

「うちはじいさんの言うことが絶対なんだ。あの人おっかないだろ?」

 社長の表情を見る限り、今の発言が冗談ではないとわかる。
 だけど私の中では辰巳さんに対してその印象は一切ないので首をかしげた。

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