憧れのCEOは一途女子を愛でる
§3.過去の失恋
***

『俺ばかり責めるなよ』
『だいたい冴実は重いんだよ』

 私を誹謗する言葉がどこからともなく聞こえてくる。
 ずいぶんと懐かしく感じるその声は、元カレの加那太(かなた)だ。
 そう認識できた途端、ぼんやりと(もや)がかかっていた加那太の顔がはっきりと見えた。
 
『お前のそういうところが嫌なんだ』

 面倒くさいとばかりに、これでもかと加那太が顔をしかめている。
 ああ、これは夢だと頭で理解し始めた。加那太とはとっくの昔に別れたのだから。

 ゆっくりと瞳を開けると、見慣れた自分の部屋の天井が映った。
 カーテンのすき間から朝日が差し込んでいて、窓の外で雀がチュンチュンと鳴いている。
 ベッドの上で上半身を起こしながら、なぜあんな嫌な夢を見たのだろうと気持ちが沈んだ。天気のいい爽やかな朝が台無しだ。

 別れてから三年が経ち、そろそろ失恋のトラウマを克服できたのではないかと思っていた。
 だけど夢に出てきてしまうのだから、まだダメみたいだ。
 本当にもう、あの恋のことは丸ごと全部忘れてしまいたいのに――

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