憧れのCEOは一途女子を愛でる
 心待ちにしていた約束の土曜日、お昼頃に加那太の住んでいるアパートを訪れてチャイムを鳴らす。
 すると緑色のジャージ姿で寝癖を付けた加那太が玄関扉を開けた。

「いらっしゃい」

「お邪魔します」

 中に入るといつもと変わらず、加那太が暮らしている生活感が漂っていた。
 彼の部屋はお世辞にも綺麗にしているとは言えない。
 家事は全般的に苦手だと自分でも言っていて、いつ訪れても片付いている試しはないけれど、それもまた加那太らしくて微笑ましい。

「朝はなにしてたの?」

「寝てた」

 加那太は午前の授業がない日や休日は遅くまで寝ている。どんなに睡眠を取っても眠いそうだ。
「まだまだ成長期なのかもな」などと今も冗談を言いつつ大きくあくびをしていた。

「お昼ご飯はパスタにしよう」

 オムライスを作るための材料も先ほどスーパーに寄って買ってきたので、それを冷蔵庫にしまいながら加那太に声をかける。

「洗濯物は?」

「溜まってる」

「じゃあ、洗濯機を回してから掃除機をかけるね」

「サンキュ」

 加那太がそう答えるのはは想定内だ。
 ヘヘっと笑いながら、ごめんねと両手を合わせる加那太が私にはかわいく思える。

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