憧れのCEOは一途女子を愛でる
「なんなんですか?! すごくビックリした! もうちょっとで身体に当たるところだったじゃない」
心臓に悪いとばかりに左胸を手で押さえながら吉井店長に向かって苦情を言っている女性の顔を見た瞬間、私は衝撃を受けて息が止まりそうになった。
彼女の顔を見るのは三年以上ぶりだ。会話を交わしたのはあの電話が最後だった。
当時ショートボブだった髪が、今はセミロングの長さに変わっているものの、目の前にいるのは百合菜で間違いない。
「最近アミュゾンが人気だって聞いたから来てみたのに、なんて店なのよ!」
あとから駆けつけたアルバイトの男の子が、すぐさま倒れたマネキンを起こして少し離れた場所へ引っ込めた。
彼が申し訳なさそうな顔で「僕がきちんと設置しなかったからですよね。すみません」と私に小声で謝ってきたので「大丈夫」と言葉を返す。
これは彼だけの責任ではない。確認を怠ったのは私だし、そもそも展示台の上に乗せようと提案したのも私だ。
よりによって百合菜とこんな形で再会するなんて、と思いながら様子をうかがっていると、この場になぜか神谷社長が現れた。
「こちらの不手際でお客様を驚かせてご不快な思いをさせてしまいました。心よりお詫びいたします」
平日の昼間なので幸い店内は混みあっておらず、マネキンが倒れたそばには百合菜しかいなかったようだが、いきなり現れて頭を下げる社長を目にした彼女は、少し怒りの感情が収まったように見えた。
「あなた誰ですか?」
「ジニアールのCEOを務めている神谷といいます」
「ここの社長さんなんだ……」
百合菜は私に気付いていなかったようだが、彼女へ向けて視線を送り続けていた私に目を止めた。
心臓に悪いとばかりに左胸を手で押さえながら吉井店長に向かって苦情を言っている女性の顔を見た瞬間、私は衝撃を受けて息が止まりそうになった。
彼女の顔を見るのは三年以上ぶりだ。会話を交わしたのはあの電話が最後だった。
当時ショートボブだった髪が、今はセミロングの長さに変わっているものの、目の前にいるのは百合菜で間違いない。
「最近アミュゾンが人気だって聞いたから来てみたのに、なんて店なのよ!」
あとから駆けつけたアルバイトの男の子が、すぐさま倒れたマネキンを起こして少し離れた場所へ引っ込めた。
彼が申し訳なさそうな顔で「僕がきちんと設置しなかったからですよね。すみません」と私に小声で謝ってきたので「大丈夫」と言葉を返す。
これは彼だけの責任ではない。確認を怠ったのは私だし、そもそも展示台の上に乗せようと提案したのも私だ。
よりによって百合菜とこんな形で再会するなんて、と思いながら様子をうかがっていると、この場になぜか神谷社長が現れた。
「こちらの不手際でお客様を驚かせてご不快な思いをさせてしまいました。心よりお詫びいたします」
平日の昼間なので幸い店内は混みあっておらず、マネキンが倒れたそばには百合菜しかいなかったようだが、いきなり現れて頭を下げる社長を目にした彼女は、少し怒りの感情が収まったように見えた。
「あなた誰ですか?」
「ジニアールのCEOを務めている神谷といいます」
「ここの社長さんなんだ……」
百合菜は私に気付いていなかったようだが、彼女へ向けて視線を送り続けていた私に目を止めた。