憧れのCEOは一途女子を愛でる
「真凛のポスターを見ていたら思い出したんですけど、神谷社長って真凛とデートしてて写真に撮られた人?」
再び社長の前で歩みを止め、百合菜は馴れ馴れしい態度で答えにくい質問をした。
社長はさすがに苦笑いになり、否定も肯定もしなかった。
「私ね、冴実と同じ大学だったんですよ。友達なんです」
「……え」
驚いた私は思わず声が出てしまったが、聞き間違いではないと思う。彼女は私との関係を“友達”だと説明した。
百合菜がそれを言うのかと怒りの感情が遅れてやってきたけれど、この場で責め立てるわけにもいかない。
「これを機に私とも仲良くしてくださいね」という言葉を言い残し、社長になにか小さなメモを手渡しているのが見えた。
ジニアールの社員だという立場を忘れて「やめて!」と叫びそうになるのをぐっと堪えた。
百合菜は面白がって、私をまた攻撃対象にしたいのだろうけれど、そのために社長を利用されたくない。
いや、今回のターゲットは私ではなく、真凛さんと熱愛の噂がある男性を横取りしたいという欲望が芽生えたのかもしれない。どちらにせよ、よこしまな考えであることは間違いない。
スタッフ全員が丁寧に頭を下げる中、百合菜が満足げな表情で帰っていき、私はとりあえずホッと胸をなでおろす。
今は仕事に集中しようとゴルフウェアの展示を直していると、心配そうな面持ちで吉井店長から声をかけられた。
「あとはやっておくよ。香椎さん、大丈夫? ごめんね、俺もきちんと確認しなかったから」
「いえ。私の責任です。ご迷惑をおかけしてすみません」
店長は首を横に振ってくれたけれど、やるせない気持ちでいっぱいになった。
「次のアポイントがあるから俺も行かなきゃ」
社長が腕時計で時間を確認しつつ、私にやわらかい笑みを向けてくれた。
会社のため、社長のために役に立ちたいのに、任された仕事を成し遂げられないどころか足を引っ張っているようで自分が許せない。悔しさで涙目になりながら社長の背中を見送った。
再び社長の前で歩みを止め、百合菜は馴れ馴れしい態度で答えにくい質問をした。
社長はさすがに苦笑いになり、否定も肯定もしなかった。
「私ね、冴実と同じ大学だったんですよ。友達なんです」
「……え」
驚いた私は思わず声が出てしまったが、聞き間違いではないと思う。彼女は私との関係を“友達”だと説明した。
百合菜がそれを言うのかと怒りの感情が遅れてやってきたけれど、この場で責め立てるわけにもいかない。
「これを機に私とも仲良くしてくださいね」という言葉を言い残し、社長になにか小さなメモを手渡しているのが見えた。
ジニアールの社員だという立場を忘れて「やめて!」と叫びそうになるのをぐっと堪えた。
百合菜は面白がって、私をまた攻撃対象にしたいのだろうけれど、そのために社長を利用されたくない。
いや、今回のターゲットは私ではなく、真凛さんと熱愛の噂がある男性を横取りしたいという欲望が芽生えたのかもしれない。どちらにせよ、よこしまな考えであることは間違いない。
スタッフ全員が丁寧に頭を下げる中、百合菜が満足げな表情で帰っていき、私はとりあえずホッと胸をなでおろす。
今は仕事に集中しようとゴルフウェアの展示を直していると、心配そうな面持ちで吉井店長から声をかけられた。
「あとはやっておくよ。香椎さん、大丈夫? ごめんね、俺もきちんと確認しなかったから」
「いえ。私の責任です。ご迷惑をおかけしてすみません」
店長は首を横に振ってくれたけれど、やるせない気持ちでいっぱいになった。
「次のアポイントがあるから俺も行かなきゃ」
社長が腕時計で時間を確認しつつ、私にやわらかい笑みを向けてくれた。
会社のため、社長のために役に立ちたいのに、任された仕事を成し遂げられないどころか足を引っ張っているようで自分が許せない。悔しさで涙目になりながら社長の背中を見送った。