憧れのCEOは一途女子を愛でる
 車のバックドアを開けると、トランクの右端に折り畳みのアウトドアチェアが二脚あった。
 その隣にはローテーブルのセットが入っているバッグが見える。当然ながらどちらも我が社の商品だ。

 椅子はリクライニングができ、バックポケットや肘掛けが備わっている。開くだけで簡単に組み立てられるのでストレスなく扱えるとキャンパーから高評価を得ていてロングセラー商品となっている。
 社長がバッグに収納されていた中身を取り出すと、ローテーブルはロール式天板と折りたたみ式フレームに分かれているシンプルな木製のデザインのものだった。
 フレームを広げた上に天板を乗せて固定をするだけなので、彼は慣れた手つきであっという間にセッティングを終えた。

「車の後ろはこんなふうになっているんですね」

 あとで見てみたらいいよと言われていたのでバックドア側からそっと中をうかがうと、足を伸ばして横になれそうなネイビー色のフラットなソファーがあった。
 キャビネットの上にはランタンやバーナー、調理器具が置かれているのが見える。

「これ、乗せっぱなしにしてたけど邪魔だよな」

 彼が顔をしかめて指を差したのは、車内の頭上に設置されているサーフボードのことだ。私は笑みをたたえつつ即座に首を横に振った。

「専務とサーフィンに行ってらっしゃるんですよね」

 私の言葉に彼は小さくうなずき、「それも知ってるのか」と苦笑いを浮かべる。

「朔也は本当にサーフィンが好きだからよく付き合わされるんだよ。あと、冬はスノーボードにも」

「おふたりとも絵になりそうですね。カッコいいんだろうなぁ」

「アクティブすぎる、って伊地知さんにはあきれられてるけど」

< 87 / 132 >

この作品をシェア

pagetop