憧れのCEOは一途女子を愛でる
 辰巳さんが満面の笑みで手招きをする姿を想像したら、なんだかほっこりとした気持ちになった。
 やっぱりアウトドアは心が躍る。それを実感しながら働けている今の環境に感謝するのを忘れないでいたい。

「それなら俺とふたりで行こう。釣りでもバーベキューでも」

「え?」

「ふたりは嫌?」

 好きな男性に誘われて嫌なわけがない。私はあれこれ考えるよりも先に首をブンブンと横に振って否定をした。
 半分冗談で言ったのか、彼が私の反応を見ながら楽しそうに笑っている。

「じいさんたちが画策したせいで見合いさせられたような感じだったけど、俺は君と会社以外で繋がれてよかったと思ってる」

「私も、です」

 ある意味祖父たちのおかげで、雲の上の存在だった彼とこうして出かけることができているのだ。
 強引に引き合わされた形だったものの、今となっては私もふたりには感謝している。彼も同じ気持ちでいてくれているようでうれしい。

「“水(きよ)ければ月宿る”っていうことわざ、知ってる?」

「……いえ」

「水が澄んでいれば月がきれいに映るように、心に汚れがない人には神仏の恵みがあるっていう例えらしい。この川の水は君の心と同じで、本当に綺麗だよな」

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