それぞれの恋
直子の恋

桜の咲き誇る道を、慣れないヒールで足早に歩く。

この春、私は短大生になった。

今日はその入学式なのだ。

なのに、私ときたら式に間に合うかどうかの瀬戸際にいる。


「はっ…はっ…初日から寝坊なんて最悪…」


息を切らしながら、駅から大学までの距離をひたすら走る。

昨日の夜は不安と緊張でなかなか寝付けず、そのせいで珍しく寝坊をしてしまったのだ。


私は無難な成績をとり続け、無難なレベルの高校から就職に無難な資格の取れる短大に進んだ。

これといった夢も目標もなかったし、無難な人生が送れるならそれでよかった。


「はぁ…はぁ…なんとか間に合った…」


私は受付でパンフレットと資料を貰って体育館に入った。

会場には、たくさんの新入生が座っていた。

式は短大の生徒だけではなく大学の生徒も一緒やるらしい。

私は空いてる席に座った。


< 1 / 13 >

この作品をシェア

pagetop