それぞれの恋
直子の恋
桜の咲き誇る道を、慣れないヒールで足早に歩く。
この春、私は短大生になった。
今日はその入学式なのだ。
なのに、私ときたら式に間に合うかどうかの瀬戸際にいる。
「はっ…はっ…初日から寝坊なんて最悪…」
息を切らしながら、駅から大学までの距離をひたすら走る。
昨日の夜は不安と緊張でなかなか寝付けず、そのせいで珍しく寝坊をしてしまったのだ。
私は無難な成績をとり続け、無難なレベルの高校から就職に無難な資格の取れる短大に進んだ。
これといった夢も目標もなかったし、無難な人生が送れるならそれでよかった。
「はぁ…はぁ…なんとか間に合った…」
私は受付でパンフレットと資料を貰って体育館に入った。
会場には、たくさんの新入生が座っていた。
式は短大の生徒だけではなく大学の生徒も一緒やるらしい。
私は空いてる席に座った。