夜を照らす月影のように#5
ネクロマンサーのカズが、僕らの仲間になってから数日が経った。

カズも捨てられて行く宛てがないらしく、僕らの家で暮らすことになった。

トントントン、と僕と前世からの幼なじみのメルキュールが食材を切る音がキッチンに響く。

朝から母さんと僕の家に居候をしているエリカさんは用事で街に出かけていて、昼までに帰ることが出来ないみたいだから、この家で暮らす男子の中で料理が出来る僕とメルが昼食作りを担当することになった。

「思ったより、手際良いね」

メルと並んで昼食を作っていると、メルが話しかけてくる。

「……それ、どういう意味?」

手を止めることなく返すと、メルは「ノワールって、料理とか下手なイメージあったから」と笑いながら言った。

僕、前世では自炊してたんだぞ!料理くらいできるわ!

そうメルに言いたくなったけど、ぐっと堪える。ここには僕とメル以外の、僕らに前世の記憶があることを知らない仲間も一緒に住んでいるから。

今ここに誰もいないけど、聞かれてたら嫌だし。

前世からの幼なじみとはいえ、僕もメルも一緒に料理したこともなければ、料理を振舞ったこともないし、そう思うのも無理はないよね。

その会話をした後は、無言で僕らは手を動かした。無言だけど、全然気まずくない。メルの隣にいるだけで、心地いいと感じた。
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