恋してはいけないエリート御曹司に、契約外の溺愛で抱き満たされました

　言葉を選んでみたものの、湯島くんが振り返ってなにか言ってくることはない。

　エレベーターが到着するのを、扉に体を向けたまま待っている。

　でも、その足先は小刻みに地面を叩いていて、イライラしているのを物語っている。

　沈黙が逆に恐ろしく、息苦しさを感じはじめる。

　そんなタイミングで「ポン」とエレベーターホールに音が鳴り響き、待っていた一基が到着する。

　湯島くんは開いたエレベーターに足早に乗り込んでいき、私は慌ててそのあとを追いかけエレベーターに乗り込んだ。

　エレベーターの中には先客がいて、奥にスーツの男性がふたり立っている。

　操作盤の前に立った湯島くんの背後に回り、ぽつりと「ごめんなさい」と呟いた。


「だから、謝るなっつってんだよ！　俺がなにかしたみたいだろ？　その被害者面も腹が立つ。神田じゃなくて、被害者は俺だからな、むしろ」


　エレベーターという密室にいるため、私だけに聞こえるよう小声で言っているつもりかもしれないけれど、それでも確実に声のボリュームが上がっているのを感じる。

　もう余計なことは言わないでおこうかと自分の足もとに視線を落としたとき、すぐそばに湯島くんが近付いてくる気配を感じた。そして、耳元に迫った唇から信じられない言葉が飛び出した。