恋してはいけないエリート御曹司に、契約外の溺愛で抱き満たされました


「え……? うわ、すごい」


 扉を出ると、レンガの道が真っすぐに続き、その周囲は白樺の森に包まれている。建物の庭園であろうそこには、一席だけ特別な席が用意されていた。

 すでにふたり分の食事の用意がされた席に案内され、まず私からスタッフに椅子を引いてもらう。

「すみません」と、慣れない状況に恐縮しながら席についた。すぐに向かいに彰人さんもかける。

 スタッフが「失礼します」と一礼して席を離れていった。


「あの、このレストランは……?」

「三年ほど前に、軽井沢のこの一帯をリゾート地として開発したんだ。ここはそのひとつ」


 筧地所が手掛けた軽井沢リゾートと聞き、心の中で『あっ』と気づく。

 私が二十五歳になった年、当時メディアで連日紹介されていたのを覚えている。

 軽井沢に新しい風が吹く──筧地所グループによって話題のレジャー施設が誕生すると、情報番組などで著名人も多く訪れていた。

 商業施設をはじめ、宿泊施設やレジャースポット、都会では味わえないマイナスイオンの中で過ごす非日常の癒し体験ができるとあって、機会があったら一度訪れてみたいと思いながらテレビを眺めていた。

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