恋してはいけないエリート御曹司に、契約外の溺愛で抱き満たされました
「っ……!」
目を開いたまま唇で受け止める柔らかい感触。それはほんの数秒で、離れ際チュッと軽やかな音を立てていく。
近距離で目を合わせた彰人さんは微笑を浮かべ、私の頭をぽんぽんと優しく撫でた。
「じゃ、行ってくる」
「あっ、は、はい!」
ひとり動揺しながら慌てて車を降りる。
彰人さんはひらりと手を振り、車を発車させた。
走り去っていく車を見届けながら、ドッドッと激しく打ち付ける心臓の音に今更気づく。
予告なしの出来事で、鼓動が暴走していることにすら気づけていなかった。
優しく触れただけの口づけなのに体が熱い。
偽装でも、夫婦となるから……?
車から降りたままの場所で、しばらく鼓動の高鳴りを抱えながらひとり立ち尽くしていた。