恋してはいけないエリート御曹司に、契約外の溺愛で抱き満たされました
7、膨れ上がる気持ち──side Akito
眺めているパソコン画面の端から、部屋に入ってきた秘書の雪島の渋い顔が覗く。
「失礼いたします。社長、明日の十六時からの会議ですが、どうしてもその時間しか都合がつかないとのことです」
明日は急遽、里穂子の和歌山にある実家に向かうことが決まった。
自分のスケジュールを調整することはいくらでも可能だが、相手あってのものは厳しい場合も多々ある。
「わかった。それならリモートで参加する旨伝えてくれ。その時間だけ確保する」
「承知いたしました。ちなみに、東京へのお帰りは明後日午前で問題ないでしょうか」
「ああ、その予定でいる」
雪島は「かしこまりました」といって席を外した。
急激に話を進めすぎているだろうか。ここ二日の里穂子の様子を振り返り、ふと気にかかる。
しかし、思っていたよりも、彼女に妻になってもらう交渉をするのに時間を要した。
家政婦として同じ空間、時間を共有する。そのうえで話を持ち掛けるつもりでいた。関係を進めることに慎重になっていたのは間違いない。