恋してはいけないエリート御曹司に、契約外の溺愛で抱き満たされました
雪島には、三歳になる娘がいる。
結婚して五年。夫婦共にすぐにでも子どもが欲しかったそうだが、なかなか子宝に恵まれなかった。
そんなふたりのもとにやってきた娘を、雪島が猛烈に溺愛しているのは俺もよく知っている。
スマートフォンの待受けは日々撮りためた自慢の娘のショットで、たまに顔を緩ませて眺めている姿も見かける。
雪島から話してくることはないが、訊けば幸せな家庭の様子も聞かせてもらえる。
愛妻家で子煩悩な雪島を、俺は密かに尊敬しているのだ。
「雪島が言うと、やけにリアリティがあるな」
「そうでしょうか。しかし社長、社長がそんな難しい顔をなさる必要はまったくありません」
そう言われて、自分が難しい顔をしていることを知る。
「なぜだ?」
「社長のような方が挨拶に来たら、断るなんてこと誰もなさらないでしょう。有り得ません」
なんの自信があって雪島がそこまで言い切るのかわからない。でも、本人にとっては相当真面目な発言だったらしく、一切表情は崩れない。