恋してはいけないエリート御曹司に、契約外の溺愛で抱き満たされました


 雪島には、三歳になる娘がいる。

 結婚して五年。夫婦共にすぐにでも子どもが欲しかったそうだが、なかなか子宝に恵まれなかった。

 そんなふたりのもとにやってきた娘を、雪島が猛烈に溺愛しているのは俺もよく知っている。

 スマートフォンの待受けは日々撮りためた自慢の娘のショットで、たまに顔を緩ませて眺めている姿も見かける。

 雪島から話してくることはないが、訊けば幸せな家庭の様子も聞かせてもらえる。

 愛妻家で子煩悩な雪島を、俺は密かに尊敬しているのだ。


「雪島が言うと、やけにリアリティがあるな」

「そうでしょうか。しかし社長、社長がそんな難しい顔をなさる必要はまったくありません」


 そう言われて、自分が難しい顔をしていることを知る。


「なぜだ?」

「社長のような方が挨拶に来たら、断るなんてこと誰もなさらないでしょう。有り得ません」


 なんの自信があって雪島がそこまで言い切るのかわからない。でも、本人にとっては相当真面目な発言だったらしく、一切表情は崩れない。

< 135 / 272 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop