恋してはいけないエリート御曹司に、契約外の溺愛で抱き満たされました
あれ……この方って、確か……?
印象的な端整な顔立ちだから、メディアで見かける著名人の方かと一瞬思った。でも、すぐにそうではないと気づく。
うちの会社の取引先でもある『筧地所株式会社』の代表取締役だ。
来社されたところを何度かお見掛けしたことがあるし、過去に一度だけ話したこともある。
ほんのひと言二言だったけど、前に会社のエレベーター内で話しかけられたのだ。
筧さんのほうは、もうきっと覚えていないと思うけれど。
「騒いでもなにも変わらない。疲れるだけです。静かに復旧を待ちましょう」
行動を指摘され、湯島くんは振り返り筧さんを睨みつける。
しかし、正論をぶつけられなにも言い返すことができないのだろう。
奥歯を噛みしめてこらえているのが見てわかる。
そんなとき、再びガタンとエレベーターが揺れ、下降しはじめる。
「直った……?」
思わず呟いてしまったけれど、その数十秒後には目的の一階にたどり着き、エレベーターの扉が開いた。