恋してはいけないエリート御曹司に、契約外の溺愛で抱き満たされました
「今朝は朝食の用意はいらない」
「え……?」
「移動中に取れるように手配してあるから」
「そうなんですか?」
「ああ、だからそんなに慌てて起きなくていい。むしろもう少し寝たらどうだ」
そう言って、彰人さんは掴んだ私の手を引く。両手を体に回して引き寄せ、後頭部に手を添えて枕にそっと横にさせた。
「あと一時間くらい寝ていても問題ない」
「え、でも……」
彰人さんはひとりベッドを出ていく。
その姿を横になったまま見つめていると、「あとで起こしにくるから」と言い残して寝室を出ていった。
きっと、よく眠れていないだろうからと気遣ってくれたに違いない。
せっかくの心遣いに感謝し、布団を引き上げ目を閉じる。
静かな部屋でひとりになり、ひどい夢に小さく息をつく。やはり、精神的に追い詰められているのかもしれない。
悪夢にうなされるようなことが続けば、医師に診てもらったほうがいいと彰人さんは言っていた。
このまま少しずつでも、平穏な生活を送って気持ちが落ち着いていってくれれば、それに越したことはない。
本当に優しい人、なんだな……。
私の様子を心配し、腕の中で優しく髪を撫でてくれた彰人さんに再び鼓動が音を立てていく。
結局いろいろなことを考えているうち、眠れないまま一時間はあっという間に過ぎ去っていった。