恋してはいけないエリート御曹司に、契約外の溺愛で抱き満たされました
2、彼女との出会い──side Akito
離れていく小さな背中を見つめながら、手を離してしまったことは間違いだったのではないかと自問自答する。
このまま行かせてしまえば、またあんなふうに罵倒されるのは目に見えている。
「社長?」
彼女の姿を見送る俺に後方から声がかかる。
秘書の雪島がこちらの動向を窺っていて、ハッと我に返った。
「悪い。行こう」
こんな場所で偶然にも彼女とエレベーターに乗り合わせたことで、ここに来た本来の目的を忘れそうになった。
気を取り直して、ホテル内の会場へと足を向ける。
しかし、頭の中は今会った彼女のことでいっぱいのまま。やはり、どうしても気にかかる。
彼女を知ったのは、取引先である松重不動産に訪れた二年ほど前のこと。
三度目の訪問で、気温が三十五度に迫る猛暑日だった。