恋してはいけないエリート御曹司に、契約外の溺愛で抱き満たされました


「当時は単に、庇護欲を掻き立てられて守ってやりたいと思って、自分の縁談話からも逃れられるという利点もあったから結婚を持ちかけた。けれど、今は心の底から里穂子のことが好きだ」

「彰人さん……」

「でも、里穂子が俺のことを受け入れられないと言うなら、潔く諦めなくてはならないかもしれない。でも、簡単にはきっと──」

「そっ、そんなこと、言うわけないじゃないですか!」


 とんでもないことを言う彰人さんの言葉を遮って言い返す。

 気づけば痛いほど鼓動が高鳴っていて、アドレナリンが大量に出ている。

 仕事の延長で頼まれ、偽装の妻という立場で彰人さんのそばに置いてもらってきた。

 気遣ってもらったり、優しかったり、時に甘かったり……だけどそれは全部、なんの感情も持ち合わせてないのだろうと思っていた。

 そう思わないと、どんどん彰人さんに惹かれていってしまいそうで、特別な好きという感情を抱いてしまったらいけないと、無意識に自分をコントロールしてきた。

 それなのに、こんなふうに想いを伝えられたら、自分の感情をもううまく制御できなくなりそうだ。

 身分が違う。彼は、私が好きになってはいけない人なのに……。

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