恋してはいけないエリート御曹司に、契約外の溺愛で抱き満たされました
10、引き離される運命


 シンガポールから早半月。季節は梅雨を迎えていた。

 どんよりと空は暗く、細かく霧のような雨が降り続いている。
 高層階のガラス窓から外を眺めてみても、こういう日は靄がかかっているように遠くまで見ることはできない。

 一週間ほど前から、彰人さんは出張で九州のほうへ行っている。

 今年のはじめ、長崎にある有名観光施設を買収した筧地所が、五月から施設のリニューアルを本格始動した。

 現地に飛んだ彰人さんも多忙を極めているようで、一週間経った今もまだ帰宅していない。

 連絡は一日何度もくれるけれど、東京に戻ってくるほどの休暇は取れないようだ。

 スケジュールを見て戻れる時間があれば東京にも帰ってくると話してはいたけれど、きっと難しいのだろう。

 彰人さんと離れて一週間。

 考えてみれば、彰人さんと出会ってからこんなに長期間顔を合わせないことははじ めてだ。

 会わなくても一日二日、それ以上の間が空くことはなかった。


 会いたいな……。

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