恋してはいけないエリート御曹司に、契約外の溺愛で抱き満たされました


 自分を完全に否定されたようで、また声が出せなくなる。

 それはわかっていたこと。

 私が彰人さんのとなりに立つことは、やっぱりどうしたって認めてもらえないこと。

 もうスタートラインすら違う場所。同じ土俵ではない。そうはっきりと言われているのだ。


「彰人には、相応しい女性がたくさん妻に立候補しているの。だから、あなたと新婚ごっこをしている場合じゃないのよ。わかるかしら?」

「……はい」

「あの子が早まって、婚姻届まで提出してしまったようだけど……仕方ないわ。そんなことはなんとでもなるし、問題ではない」


 だんだんとお義母様の声が、より真剣に慎重になっていく。


「ここまで話せばもう理解したわよね?」


 そう言ったお義母様は、傍らに置いたブランドもののハンドバッグから、スマートフォンを取り出しどこかに電話をかけはじめる。「下に車を」とひと言だけ伝え通話を終えると、私に向かって「出る支度をしてちょうだい」と言った。

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