恋してはいけないエリート御曹司に、契約外の溺愛で抱き満たされました


「この部屋を、あなたにあげるわ」


 お義母様はそう言って、鍵とスペアキーが入っている封筒を私に差し出す。


「あのマンションを出て、ここでひとり暮らしをするの。ただ出ていきなさいとだけ言って追い出さないわけだから、親切なほうよね?」


 話をまとめるように言い、「それから……」と、バッグの中からまた別の封筒を取り出す。


「これは、手切れ金みたいなものよ」

「えっ……」

「仕事も辞めてしまったみたいだし、仕事が決まるまで、これだけあれば十分暮らせると思うから」


 そう言って、分厚い封筒を差し出した。

 新しい住まいに、手切れ金。

 お義母様はこれで彰人さんから離れてくれと言っているのだ。

 考えもしなかった展開に、思考がついていかない。

 それでも、ただひとつわかっているのは、すべて受け取れないということ。

 勇気を持って口を開いた。

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