恋してはいけないエリート御曹司に、契約外の溺愛で抱き満たされました
課長にそう言われてはじめて、まだ今日のランチを取っていないことに気づいた。
普段なら、お昼休みが始まる十二時が近付いてくるとお腹 が空いたなと感じてくるのに。
事が順調に運べば、今日は外出したついでに湯島くん と一緒にお昼を取って帰社するタイムスケジュールだった。
それが、あのホテルからすでに別行動で、スマートフォンに入ったメッセージは【先に帰る】という素っ気ないもの。
どこかで待っているのかもと急いでホテルを出たけれど、それも意味のない行動だった。
「里穂子ちゃん、お昼まだなら一緒に食べに出ない?」
出かけている間に届いていた書類などを片付けていると、二年先輩の松宮若菜さんが声をかけてくれた。
若菜さんは歳がふたつ上で近いこともあり、職場内では親しくしてもらっている頼れる先輩だ。
ワンレンのロングヘアが似合う美人でスタイルもよく、まさに綺麗 な大人女子の王道といったタイプ。
平凡であか抜けない私が、こんな女子になりたいと思える憧れの先輩だ。
「あ、はい。一緒に行きたいです」
若菜さんは課長に「神田さんと出てきます」と声をかけてくれる。
お財布とスマートフォンだけを手に、オフィスをあとにした。