恋してはいけないエリート御曹司に、契約外の溺愛で抱き満たされました
「里穂子──」
エントランスから私を呼ぶ愛しい声が聞こえた。必死に飛びついたナイフを持つ手を取り押さえようと、別の手の援護が加わる。
助けに入ったのは彰人さんで、湯島くんの手からナイフを落としてくれた。
よろけた湯島くんを突き飛ばし、私を庇うように抱き寄せる。
絨毯の床に転がった湯島くんを、雪島さんや駆け付けた警備員が取り押さえにかかった。
「里穂子、大丈夫か!」
「彰人さん……」
ガタガタと勝手に体が震え、止めようとしても言うことを聞かない。
立っていられず、その場に座り込んでしまった私を、彰人さんが抱き留めてくれた。
「お義母様は……?」
「ああ、無事だ」
「よかった……」
力なく笑ったとき、少し離れたところで立ち尽くすお義母様がこっちを見ているのがぼやけて目に映った。
「里穂子! おい、里穂子──」
急激に目の前が暗くなっていき、そのまま意識を手放した。