恋してはいけないエリート御曹司に、契約外の溺愛で抱き満たされました
「自分のことより、私の心配をするなんて……あなた、変な人ね」
呆れたような言葉でも、その中にどこか優しさが滲んでいる。
お義母様が私に対してはじめて見せてくれた柔らかい表情は、それだけで私の顔を自然と笑顔にしていた。
「でも、あのときのは感心しないわ。もし、ケガでもしていたら……」
「すみません。私も、自然と体がそう動いていて……無意識というか」
今思えば恐ろしいことをしたと思う。
刃物を持った、しかも自分より体も力も強い男性に、素手で向かっていったのだ。
あのときは絶妙なタイミングで彰人さんが助けに来てくれたから、ケガをすることもなく済んだ。でも、もしかしたら命を落としていたかもしれないのだ。
お義母様が感心しないというのは間違いない。
「ほんと、危なっかしい人ね」
「すみません……」
「でも……ふたりの愛は認めてあげるわ」
「え……?」
お義母様は微笑を見せ、ソファーに置いてある自分のバッグを手に取る。
「目が覚めたら、彰人が連絡をしてほしいと言っていたから、電話してくるわね」
そう言い、病室をひとり出ていった。