恋してはいけないエリート御曹司に、契約外の溺愛で抱き満たされました
考え込みすぎてぼんやりしていたところ、突然頭上から声が降ってきた。
現実に引き戻されて顔を上げる。
すぐそばに立っていたのは、スーツの男性。
スラリとした長身を見上げて、その顔に思わず「あっ」と声が漏れる。
そこに現れたのは、昨日訪れたホテルで私を引き留めた筧さん。
こんなところでまたばったり会ってしまうなんて驚いた。
でも、なぜ筧さんがこんなところに? そう考えてすぐ、今見ていた物件を所有する会社のトップだということにハッとした。
「昨日は、ありがとうございました」
お礼を口にしてはみたものの、どちらかというとお見苦しいものを見せてしまい申し訳ありません、のほうが正解な気がした。
「昨日の一件で彼氏と別れることになって、同棲していた部屋から出るために部屋を探していた……」
「えっ」
まったくなにも話していないのに、ほぼ事実を当てられて目を見開く。
彼は「そんなところか?」と美しい顔に微笑を浮かべた。