恋してはいけないエリート御曹司に、契約外の溺愛で抱き満たされました


 昨日の、あのエレベーター内でのことだ。

 真剣な眼差しで見つめられ、動揺して目を逸らす。

 でも、私を真っすぐ見つめる視線を視界の中に捕らえ、恐る恐る筧さんに目を合わせた。


「日常的にかは、わからないですけど……もう、慣れましたから」


 へらっと笑ってそう答えると、筧さんの眉間に気のせいか皺が寄る。


「慣れる? あんな言葉を慣れるほどかけられているなんて、普通じゃない」


 冷静でストレートな言葉にどきりとする。

 普通じゃ……ない?


「そう、ですか?」


 そんなことを言われたの ははじめてで、首をかしげそうになる。

 私にはよくあることで、ごくごく普通のことだったからだ。


「傷つかないのか。あんなひどいことを……」

「言われたときは、それはショックですけど……でも、優しいときもありますし、そこは、プラスマイナスゼロと言いますか」


 最近は、優しい湯島くんをあまり見ていない。けれど、お付き合いを始めた頃からそうだった。

 怒ったりしたときは、必ずそのあと優しく接してくれる。

 ひどいことを言われたなんて忘れてしまうほど、癒してくれるのだ。

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