恋してはいけないエリート御曹司に、契約外の溺愛で抱き満たされました
6、涙と、偽装の妻契約と
遠くで聞こえる電子音がだんだん近付いてくる。
それがスマートフォンの目覚ましだと気が付いて、手探りで頭の周辺をかき回す。
薄目を開けてほとんど無意識のうちにアラームを止め、寝起きながらに感じた異変にハッと意識が研ぎ澄まされた。
明らかに昨夜とは違う寝心地。それに枕があるし、グレーカラーのシルクのカバーがかけられたかけ布団もかぶされている 。
なにより、視線の先に見えたものに息が止まりかけた。
ちょっと待って……なんで!?
日中はセットされていた髪はさらりと流れ、無造作に顔にかかっている。
目を閉じ眠る表情もやはり美しく端整で、こんな状況でもつい見入ってしまう自分に驚いた。
寝起きの働かない頭で必死にこの状況を考える。
昨夜、たしかにリビングのソファーで眠りについた。バスタオルを敷いてトレンチコートをかぶって眠ったのは間違いない。
それなのに、どうしてそっとドアを閉めたはずの寝室のベッドに……?
しかも、どうして筧さんと一緒に寝ているの!?
もしかしたら、夢遊病のように勝手に起きて寝室に移動してしまったとか……?