恋してはいけないエリート御曹司に、契約外の溺愛で抱き満たされました
なんにせよ、この状況はいろいろな意味でまずい。
そろりとかけ布団をはぎ、もぞもぞと動き出す。筧さんが眠る逆方向に体を向けて静かに抜け出そうとしたところで、ベッドの中で腕を掴まれた。
「ひゃっ!」
「おはよう」
背後から聞こえてきた声に恐る恐る振り返る。
今の今まで眠っていたはずの筧さんが、横になったままじっとこちらを見ていた。
「お、はよう、ございます……」
朝の挨拶ももちろんぎこちなくなる。
すっと掴まれた手が離されたので、そそくさとベッドを抜け出した。
「あの、す、すみませんっ!」
なによりも先に謝罪が必要だと無意識に思った私は、深く頭を下げる。膝におでこが付く勢いだ。
「言い訳をするつもりはありません。ですが、私の記憶ではたしかにリビングのソファーをお借りして眠ったはずで……」
「顔を上げて」
「は、はい」
どんな顔をしていいのかもわからず顔を上げ、筧さんに目を向ける。
彼はふっと笑って枕の上に肘を立てた。手のひらに顔をのせ、私のことをじっと見つめる。