恋してはいけないエリート御曹司に、契約外の溺愛で抱き満たされました
「あんなところで寝ているから、俺が運んだんだけど」
「……は、運んだ!?」
「ああ。くしゃみをしていたし、風邪でもひいたら仕事に影響するだろう」
自分で移動していたらそれはそれで怖いと思っていたけれど、まさか筧さんがソファーから運んだという事実にはさらに驚きを隠せない。
目を大きく見開き、なにかを言おうとしてわずかに口を開いたまま静止する。
ということは、寝ている私を抱えて、このベッドまで運んでくれたと、そういうこと……!?
「本当に、ご迷惑をおかけしました!」
なんたる失態。再び頭を下げ、無礼を謝罪する。
「今後は、こういうことのないよう気をつけます。朝食の準備をしますので、失礼します!」
「朝食の準備? ここでの仕事は、退職してからでいいと言ったはずだ」
「あ……はい、そうなのですが、ここに置いていただく以上、少しはなにかさせていただかないと私も落ち着かないので、やらせてください」
「それもそうか……わかった。だけど無理はするな」
「ありがとうございます!」
合わせる顔がないというのは、まさに今のような状態を言うのだと思う。
再びぺこりと頭を下げ、逃げるように寝室を出ていく。
そのままパウダールームに向かい、朝の身支度を始めた。