恋してはいけないエリート御曹司に、契約外の溺愛で抱き満たされました
受け取られた〝退職願〟と書かれた封が引き出しに仕舞われていくのを見届けて、最後にもう一度頭を下げる。
「上に話して、退職日は改めて知らせるから。それまで引継ぎのほうを頼んだよ」
「はい、わかりました。よろしくお願いします」
退職願は昨晩、筧さんが出かけたあとに用意しておいた便せんに書いた。
人生はじめての退職願。
書いているときは少し緊張したけれど、いざ出すとなると不思議とすっと出すことができた。
現行の業務の引継ぎを終えられれば、一カ月を待たずに退職して構わないと課長から言われた。
実家の親の急病を理由にしたからだ。
両親には申し訳ないけれど、今回ばかりは具合が悪いことにさせてもらった。
「里穂子ちゃん、このあとランチどう?」
午前中、私から退職の申し出を受けた課長は、若菜さんに私の仕事を引き継ぐように指示を出した。
突然の話で、若菜さんも内心びっくりしたに違いない。大人だから、その場では顔には出さなかったけれど、急な退職の運びで事情を知りたいと思っているのだろう。