目に視えない私と目が見えない彼
第一章

幕引き



「天国には、どうやって行けばいいのかな」


心の中で、存在するのかわからない神様に訊ねた。

死を覚悟した瞬間、スローモーションになるって聞いたことがあったけど、本当だった。


クラクションの音がうるさく鳴り響く。


すぐ目の前には、私目掛けて走ってくる乗用車。
危険を知らせるクラクションを鳴らし続ける。


わかってる、
この場から逃げないと、車に轢かれるって。


でも、足が動かないの。

自分でも感じた。
———間に合わない、


一瞬、1秒の出来事のはずなのに、とても長く感じる。


脳内では懐かしい記憶が蘇っていく。
これが走馬灯なのだろうか。たった1秒のはずなのに、スローモーションで過去から現在までの記憶が頭の中に流れていく。



「まだ、やりたいこと沢山あったなぁ。
恋だってしたことないのに・・・・・・
もっと、もっと、生きたかったな」



後悔の念が頭の中で駆け巡る。
目をぎゅっと瞑ると共に、私の人生は幕を閉じた。


なぜこんなことになったかというと、
・・・・・・数時間前に遡る。
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