目に視えない私と目が見えない彼
あれ・・・・?
Tシャツにタグがついたままだ。

もう一度寝返りを打った大河先輩は、私に背中を向けている。Tシャツの首元からはタグが顔を出していた。

タグが付いたまま寝てたから、タグが首に当たって赤くなってる。痛そう。

ぐっすり眠ってるし、タグだけパッと切ってあげようかな。
・・・・うん、そうしよう。


あ、ハサミ発見。
タグを切ってあげようと、机の上にあったハサミを手に取った瞬間、



「ぎ、ぎゃああああああ!!!」

「(ひぃぃぃ)」


雄叫びのような声に驚いて、声にならない叫び声が出た。その衝撃で持っていたハサミが手から零れ落ちた。金属音と共に床に落ちる。


大河先輩は目を大きく見開いて、口は大きく開いたままだ。



「い、今、ハサミが宙に浮いてた、よな?
え、ゆ、ゆめ?・・・・・夢か?」



やばい。見られちゃった??
大河先輩には私の姿は視えてないから、ハサミが1人で浮いてるように見えたんだろうなあ。

怯えた表情をして、周辺の様子をキョロキョロと伺っている。よかれと思った行動が、怪奇現象を起こしてしまった。

そんなつもりはなかったのに。
・・・・・・ご、ごめんなさい。
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