目に視えない私と目が見えない彼
「・・・・・・昨日の話、覚えてる?」
私の願いも虚しく、ひたすらに私の方に視線を向けて、言葉を投げかけ続ける。
・・・来衣先輩っ、すぐ近くに大河先輩もいるよ?
気づいてあげてよ。
大河先輩は来衣先輩の行動を不審がって、視線の先の方を不思議そうに見つめている。
絶対怪しんでる!もう話しかけないで!
お願いだから!
「・・・・・・聞いてる?未蘭」
ああ、ついに、私の名前言っちゃったよ。
大河先輩の反応が、怖くて手から変な汗が吹き出してきた。
「・・・・・・誰だよ。未蘭って」
「ああ?」
やっと大河先輩の声が届いて、存在に気付いた来衣先輩は、さっきまでの甘い声から一変して、低く素っ気ない声に変わった。
「・・・・お前、大河か?なんだよ、いたのかよ」
「ずっといただろうが!俺しかいないだろ」
そうなんですよ。大河先輩は最初からいたんですよ。
「っち」
舌打ちが、私には聞こえた気がする。
「・・・・・・なんで2人きりなんだよ」
「ああ?そんなに俺と2人きりが嫌かよ?」
「当たり前だろ、"俺の"なんだから」
もしかして、私が大河先輩と2人きりだったと思って、怒ってる?
今にも喧嘩に発展しそうな2人を目の前にして、声が出せない私はオロオロすることしかできなかった。
ああ、どうすればいいんだろう。
わかんない、もう、わからない!
事態を収集できなくて、パニックになった私は、来衣先輩の手を握って、連れ出した。
ダメだけど、ダメなんだけど・・・・・・
ご、ごめんなさい。