目に視えない私と目が見えない彼
誰もいない廊下までたどり着くと、とりあえず、危険な状況からは抜け出せたのでホッとため息が自然と漏れた。


「あ、来衣先輩、いきなりすみません」

「ずっとシカトされてたから、嫌われたのかと思った」

「き、嫌ってなんてないですよ」

「よかった、それ聞けたからもう言うことないや、嬉しい」


感情をストレートに伝えてくれる来衣先輩の言葉に、心は素直に喜んでしまう。

ダメなのに、だめなのはわかっているのに
嬉しくなってしまうんだ。


「来衣先輩と大河先輩って仲悪いんですか?」

「・・・・・・いや、仲良い方だと思ってたんだけどな」


気になってたことを聞くと、来衣先輩は少し目を伏せながら話を続けた。


「目が見えなくて、絵が描けなくなった俺のことは、もう見たくないんだってよ」

「そんな酷いこと言ったんですか?」

「・・・・・・ああ」

酷いっ、そんな酷いこと言うなんて、
怒りが沸々と込み上げてきた。


「・・・・・本当はわかってるんだ。
大河は俺以上に、俺が描けなくなったことが悔しいんだよ」
< 112 / 256 >

この作品をシェア

pagetop