目に視えない私と目が見えない彼
来衣先輩は、大河先輩との間に起きたことを丁寧に教えてくれた。
病気がわかって、最初は心配してくれていた大河先輩は、来衣先輩が美術部を辞めると言い出すと、態度が豹変したらしい。
「俺も辞めたくなかったけど…目が見えないから諦めざるを得なくて。仕方なかったんだ」
「・・・・・・」
「俺が辞めたあたりから、大河も美術部に顔を出さなくなったって、人づてに聞いた」
「・・・・・そう、だったんだ」
「俺もあの時、もっとしっかり大河と話せばよかったと思ってる。ただ、病気だとわかった頃は、もう精神的にいっぱいいっぱいで・・・大河のことまで考える余裕がなかったんだよな」
悲しげに弱々しくなる声が、後悔してることを伝えてくれるようだった。
きっと、それぞれに思うことがあって、上手く伝わらずに、少しすれ違っちゃったのかな。
言葉を伝えることって大切だなあ。
二人は仲直りできないかな…。
あっ!ハッとして少し話し込んでしまったことに気付いた。
こうして来衣先輩とずっと話しているわけにはいかない。大河先輩の元に戻らないと。対象者からずっと離れていると、注意を受けそうなのですぐに戻ることにした。
「来衣先輩、私、ちょっと・・・・・・」
「え、未蘭?」
名残惜しくなってしまうので、顔は見ないで言葉だけ残してその場を後にした。