目に視えない私と目が見えない彼
「おっ!君エリート組?」


告げられた言葉の意味が分からなくて、戸惑っている私の目の前に、スーツ姿の男性がひょこっと現れた。

目がくりっとしていて男性だけど、可愛さを感じた。同い年くらいに見える。


「エリート組ってなんですか?」


「エリート組は、死ぬ前に善人だった人。
良い行い(徳)をたくさん積んだ人しかなれないんだよ。君、名前は?」


「・・・早川未蘭です」

「・・・・早川未蘭っと」


私の名前を復唱しながら、資料らしきものを手に取り、じっと読んでいる。


「君は、死ぬ間際少女を助けてるね、
うわぁ、君、死ぬ予定じゃなかったのに、人を助けて代わりに死んじゃったのか」


死ぬ間際?
あぁ、やっぱりあの車に轢かれて死んだのか。


「まだ学生でしょ?
命懸けで人助けなんてすごいね」

「いや、体が動いてしまって・・・・・・」

「人助けたけど自分が死んじゃうなんて、馬鹿だねー」



ケタケタと笑った彼は、失礼なことを言っているけど、不思議と嫌な気持ちにはならなかった。

なんでだろう、
喋り方が優しいからかな。


「その行為が評価されてエリート組になったみたいだ」

「・・・・・・あの!その女の子って、生きてますか?」


「君が庇ったおかげで、生きてるよ!」


良かった。
あの時の女の子だけでも生きててよかった。
自然と小さな溜息が漏れた。
< 12 / 256 >

この作品をシェア

pagetop