目に視えない私と目が見えない彼
感情の色
「も、もう、絵を描きますよ?」
「は~い」
来衣先輩に心を惑わされ続ける私は自分の気持ちから目を逸らすように、作業に集中しようとした。
来衣先輩は子供みたいにすねた顔をしながら返事をした。そんな彼がかわいく見えた。
年上なのにかわいいなんて、失礼かな。
複雑な感情の中に、愛おしいという感情が込み上げてきた。
「未蘭?」
呼ばれてハッとした。そこで考えこんでいたことに気づいた。
あ、来衣先輩は表情が見えないから、無音はなにが起きてるかわからなくて怖いよね。表情はどこか悲しそうで、申し訳なさが募る。
「ごめんなさい。少し考え事してて……」
「未蘭が見えてたらな、そしたらなにを考えてたのか気付けんのかな」
なんて返事をすればいいのかわからなくて、なんて言えば来衣先輩を傷つけずに済むのか考えてたら、またしばらく無言になってしまった。
「あ、また黙っちゃった」
「くくっ、そんな気にすんなよ。気にしすぎて俺といるのが疲れるようになったら、もっと困んだけど?」
「…それは、ないから大丈夫です」
来衣先輩は、ぽかんと口を開けて驚いた顔をした。次の瞬間には柔らかく微笑んだ。