目に視えない私と目が見えない彼
「俺の日常の小さな幸せは、未蘭」
「…えっと」
「俺は病気になってから、いつ死んでもいいと思ってた。未蘭に出会って、暗闇だった俺の世界にまた未来が見えた気がしたんだ」
「…で、でも、私は・・・・・・」
…今、私はなにを言おうとしてるんだろう。
「私は幽霊なんです」とでも言おうとしてたのか。言えるはずもない言葉は飲み込むしかなかった。ただ、来衣先輩の真っすぐな気持ちが、幽霊の私にはもったいない言葉で、居たたまれなくなった。
私が幽霊だと知らない来衣先輩と時を共に過ごすのは、騙しているような気がする。…このままじゃ、だめだよね。
頭を悩ませる私の耳に地鳴りのような音が聞こえた。