目に視えない私と目が見えない彼
違反と代償
スマホのバイブレーションが鳴った。何事かと慌てて画面を見ると、心臓がドキリと音を立てた。【呼び出し】そう表示されていたからだ。
4文字の文字を見て、どくどくと心臓は大きく鼓動した。思ったよりも取り乱さずにいられたのは、心のどこかで覚悟していたのかもしれない。
スマホの画面を見つめていると【移動】と表示画面が変わった。
あ、事務所に戻ってしまう。
来衣先輩と、お別れしてない。
彼に視線を向けると、大河先輩と話が盛り上がっていて、気づきそうもない。
明日も会えるなんて保証はないのに……。
「らい…せん……」
私の声が届いたのかわからないけど、こっちを振り向いた。と同時に私は現世から移動していた。