目に視えない私と目が見えない彼
「…教えてくれてありがとうございます」
初めて人を好きになった。
人を好きになると、こんなにも満ち足りた気持ちになるなんて、知らなかった。
「わ、私任務に戻ります!」
平然を装いたくても緩んでしまう顔を、見られるのが嫌でこの場から立ち去ろうとした。
「あら、まだ話の途中なのに」
「今日大河先輩のこと助けてあげられていないので」
「未蘭ちゃん、助けてあげられているわよ?」
「え、でも…大河先輩の身に危険が起きなくて…」
「大河さんが、同級生の絵を盗用せずに済んだじゃない」
「あ、そっか。それも助けたことになるんですね」
「難しい手助けができたわね」
「あ、ありがとうございます」
…褒められた?
頑張りが認めてもらえたようで嬉しいなあ。
「わ、私、もっと頑張ります。今日の任務時間まだありますよね?
…戻ります。戻って頑張ります!」
やる気に満ち溢れた私は勢いよく告げた。
そんな私を横目で見ながら、少しこわばった顔をして柊は楓さんに投げかける。
「楓さん、未蘭に”あのこと”言わなくていいんすか」
あのこと?何のことだろう?
柊の表情から良い話ではないことは確かだった。