目に視えない私と目が見えない彼
来衣先輩は傘が斜めに傾いていて、気付いていないのか、右側の肩だけ濡れていた。
私は幽霊なので雨が降っているのに、傘を指していない。
この不自然さに来衣先輩は気付くだろうか。
来衣先輩は私の姿を感じてはいるけど視えてない。私の周りに放たれている灯りで私のことを判断しているので、例え私が雨の中傘を指していなくても、その異常さには気づけない。
神様が意地悪をしたように、私達は複雑に交差して、複雑な関係を生んでいるのだ。
「…遅くなってごめんなさい」
「未蘭は、来てくれると思ってた」
声を掛けると来衣先輩は目元をくしゃっとさせて、安心したように笑顔を浮かべた。その顔を見ると自分がしていることへの罪悪感が減るようだった。