目に視えない私と目が見えない彼
「本当は、こないと思った。
もう、会えないかも、って」

「ごめんなさい。…ちゃんと話そうと思ったの」

「その声の雰囲気は良い話じゃねぇよな。あー、聞きたくねえな」

彼の瞳は揺れていた。頬に滴り落ちる水滴は涙なのか、雨の雫なのかわからなかった。その表情に胸の奥がぎゅっと締め付けられるように痛かった。

「・・・・っ、来衣先輩とは、もう会えません」

声が震えないように、泣いているのがばれないように、ゆっくり口を開いた。
私の頬を伝う水滴は雨じゃなくて、零れ落ちる自分の涙だ。

涙を止めようとはしない。来衣先輩には見えていないから。
流れ落ちる涙に気を配るのではなく、鼻をすすったり、声が震えないように、ただそれだけを警戒した。泣いていることが彼にばれないように。
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