目に視えない私と目が見えない彼
そうこうしているうちに、登校する生徒たちで溢れかえっていた。ここで会話をすれば、周りの人には私の姿が視えないので、来衣先輩が独り言をずっと言っている状態となる。白い目で見られかねないので距離を置くことにした。

「来衣先輩、一人で行けますか?」

「ああ、友達と待ち合わせ?」

「そんな感じです(本当は違うけど)」

「杏子が遊びたいって言ってたし、未蘭の迷惑じゃなければ、一緒に帰ろう?」

来衣先輩から強引さが薄くなったように感じるのは、私が昨日拒絶したからかな。以前の強引さがなくて、なんだか寂しい気持ちになる。本当自分勝手だ。


「……はい。来衣先輩がよければ」

「俺はいいに決まってるだろ、じゃあ、放課後未蘭の教室に迎えに行く。二年何組?」

「あー、いや・・・・えっと。私が迎えに行きます。きっと、二年の方が終わるの早いんで」

「三年の教室に来るの嫌だろ?」

「いや、そんなことないです!……むしろ行きたいです!」

「そうか?…じゃあ、待ってるわ」

よかった。来衣先輩が私のクラスに来て『早川未蘭いる?』なんてまた問いかけたら、いよいよおかしい人と噂を立てられてしまう。
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