目に視えない私と目が見えない彼
「来衣先輩、一緒に帰りましょう」

「おう!帰ろうか」

人が周りにいないのを見計らって、来衣先輩に声をかけた。私の声に反応すると無表情だった顔がぱっと明るくなった。

……なんか、これって、

放課後の教室で待ち合わせをして帰る。
ずっと憧れていたシチュエーションだった。嬉しさで胸がいっぱいになる。

コツコツと白杖の音を響かせながら、学校の廊下を来衣先輩と肩を並べて歩いた。今日は金曜日。残りの任務はあと2日。私が桜が丘高校の廊下を歩くのはこれが最後ということだ。

はたから見れば、来衣先輩がゆっくり一人で歩いているようにしか見えない。でも、確かに来衣先輩は私と肩を並べて歩いているのだ。

私たちだけの事実で、
私たちだけの秘密だ。
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