目に視えない私と目が見えない彼
「お兄ちゃんが死にたいと思っているとしたら、生きたいと思わせればいいんじゃない?」
「……そうなんだけど、どうやって?」
「お兄ちゃんの好きなものは未蘭さんなんだから!生きていく力になる思い出を作ればいいじゃん!」
「思い出?」
「その思い出があれば心が強くなるような」
そんな素敵な思い出を私に作れるだろうか。でも、杏子ちゃんと言っていることは的を得ていた。
その場限りで取り繕っても、私がいなくなった後に死んでしまうかもしれない。それでは意味がない。
私がいなくなった後も、死にたいなんて思ってほしくない。