目に視えない私と目が見えない彼
コンコン、部屋のドアがノックされた。ドアはゆっくり開いて、現れたのは来衣先輩だった。

「未蘭、遅くなる前に送っていくよ」

「お兄ちゃん、杏子、未蘭さんと明日も遊びたいな。未蘭さんに、泊ってもらってもいい?」

「それは、未蘭が困るだろ?」

「わ、わたしは、来衣先輩がよければ……(杏子ちゃん、すごく有難い。ありがとう)」

「なんか、ごめんな。杏子のわがままに付き合ってもらって。じゃあ、母さんにも許可とってくるか」
「お兄ちゃん、それは、杏子がお母さんに言ってくるからさ」

杏子ちゃんが来衣先輩の言葉に被せるように発した。


「大丈夫。ママには杏子が説明するからね」

二人の会話をそわそわして聞いてる私に小声で囁いた。霊媒師のお母さんは、私のことがおそらく視えるだろう。

そのことも踏まえて、杏子ちゃんが説明してくれるならとても有り難い。何度も深く頷いた。

来衣先輩の命の危険を守るためとは言え、幽霊の私を受け入れてもらえるだろうか。不安が心に重くのしかかる。
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