目に視えない私と目が見えない彼
不安な気持ちが片付かないまま、階段を降りてリビングのドアをゆっくりと開けた。

「……あなたが、未蘭、さん?」

ドアを開けてすぐの場所で、お母さんが仁王立ちしていたので、ビクッと肩が震えた。

鋭い視線が突き刺さって痛い。やっぱりお母さんにも、私が視えている。

バッチリと視線が重なる。重なる視線をすぐにでも逸らしたくなるくらい眼光が鋭い。

足の先から頭の先までじっくりと視られて、その視線に息が詰まりそうだった。


「・・・・・杏子の言う通りね。話は聞いたわ。詳しい話は後にして、ご飯にしましょう」

「……いや、でも、わたしは」

「わかってるわよ。大丈夫」

杏子ちゃんの話を聞いて、わかってもらえたのかな??

私は幽霊なのでご飯を食べることができない、お母さんは視えているはずなので、わかってると思うんだけど…。

優しい笑顔を向けられたはずなのに、お母さんの笑顔にぞっと全身に鳥肌が立った。
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