目に視えない私と目が見えない彼

この瞬間

コンコン、杏子ちゃんの部屋のドアがノックされると同時に、どくんと心臓が跳ねた。

お母さん?!・・・・・・消される??
恐怖でドクドクと心臓が速く波打つ。


扉を開けて現れたのは、来衣先輩だった。恐怖の気持ちが和らいでため息が漏れる。


「未蘭、明日の予定は?」

「・・・・・・えっと、なんでですか?」

「映画見に行かね?」

映画?目が見えなくても映画って楽しめるのかな?

「杏子も行きたい!」

「杏子は遠慮しろよ、デートなんだから」

デ、デート!?デートなんて誘われたことない。いつかしてみたいと憧れていた言葉に、大きく胸が高鳴る。

「杏子も行きたい!杏子も行きたい!杏子も行きたい!」

駄々をこねるように繰り返すので、子供らしい一面が微笑ましかった。

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